ドパガキとは?意味と「昔にもいたのか」を調べてみた

「ドパガキ」とは、ショート動画やSNS、音楽などに強い刺激を求め、退屈を避けようとする人を指すネットスラングです。「ドーパミン中毒のガキ」の略として紹介され、自虐にも、他人への揶揄にも使われています。[1]

名前は少しきついけれど、次々に動画を送りながら「あと一本だけ」と思う感覚なら、分かる人もいるかもしれません。

そこで気になりました。

こういう人は、スマホが登場してから生まれたのでしょうか。昔から、似たようなものはなかったのでしょうか。

調べてみると、テレビの早送りやラジオへの熱中、さらには小説の読みすぎまで話がつながっていきました。

ドパガキの意味と、「ドーパミン中毒」という説明

この言葉で語られるのは、すぐに次の刺激へ移りたくなることや、動画やSNSから離れにくいことです。音楽の好みについて使われることもあり、意味には幅があります。[1]

ただし、ネットでの呼び名と、医学的な診断は分けて考える必要があります。「ドパガキ」という言葉だけで、その人の脳の状態が分かるわけではありません。

そもそも、ドーパミンを単純に「気持ちよくなる物質」と考えると、少し話がずれます。

神経科学では、報酬を楽しむ「好き」と、それを得ようとする「欲しい」を区別します。BerridgeとRobinsonの総説では、ドーパミンは後者の「欲しい」に関わる重要な仕組みとして説明されています。[2]

「見ていて楽しい」と「次も見たくなる」は、必ずしも同じではない。

これは気になる違いです。ただ、短い動画を好むというだけで、その人が依存状態にあるとまでは言えません。

昔にもあった「次へ」「そこは飛ばしたい」

今との比較で分かりやすいのは、テレビです。

CMになると別のチャンネルへ変える。録画した番組の広告を早送りする。見たい部分を選んで見る行動は、スマホ以前にもありました。

1986年の研究報告では、こうした視聴行動と、それに困る広告業界の対応が扱われています。リモコンやビデオの登場によって、視聴者は放送されるものをそのまま受け取るだけではなくなっていたのです。[3]

今の動画のスキップと、少し似ています。

もっとも、CMを飛ばす理由は「集中できないから」とは限りません。広告に興味がなく、本編を早く見たいだけかもしれない。

同じように画面を切り替える行動でも、その理由まで同じとは限らない。この点は、昔と今を比べるときに残しておきたいところです。

ラジオも小説も、夢中になることを心配されていた

行動の似た例だけでなく、それを心配する声にも歴史があります。

心理学者Amy Orbenの2020年の論文は、新しいメディアへの不安が繰り返されてきたことを論じています。[4]

そこで紹介されているのが、1941年の小児科医による研究です。子どものラジオや映画の犯罪ドラマへの熱中が、依存や健康上の問題と結び付けて語られていました。[4]

これは、当時そのように問題視されたという記録です。現在の基準で、子どもたちに依存症があったと確認できるわけではありません。

さらに遡ると、18世紀の小説の普及にも、読書への過度な熱中や道徳への悪影響を心配する議論がありました。[4]

今なら「スマホを置いて本でも読んだら」と言われそうなのに、その本を読むことが心配されていた。

同じ娯楽でも、時代が変わると見え方は変わるようです。

日本にも、1950年代のテレビ批判で知られる「一億総白痴化」という言葉があります。国立国会図書館のレファレンス協同データベースでは、大宅壮一や松本清張による当時の表現が紹介されています。[5]

新しい娯楽を前に、「人の考える力が弱くなるのでは」と疑うこと自体は、最近始まったものではなさそうです。

今のショート動画は、昔と何が違うのか

では、今の心配も昔と同じなのでしょうか。

ここで気になるのが、見る人に合わせて内容が変わる仕組みです。

TikTokは公式解説で、視聴や「いいね」、フォローなどの反応をもとに、一人ひとりに動画をおすすめすると説明しています。動画を最後まで見たかどうかも、関心を判断する材料になります。[6]

放送中の番組から選ぶテレビと比べると、「次に何を見せるか」まで個人に合わせて調整される点が違います。

加えて、ショート動画には、スクロールしながら次々に視聴できる仕組みがあります。[7]

この違いを踏まえると、「今の人は我慢が足りないのか」だけでなく、「次を見たくなる環境がどう変わったのか」も考えてみたくなります。

これは今回の資料から僕が考えたことです。昔にも似た行動があったからといって、今と同じ環境だったわけではありません。

ショート動画で集中力は落ちるのか

実際の研究では、どこまで分かっているのでしょうか。

2025年に発表されたメタ分析では、71の研究、計98,299人のデータがまとめられました。短い動画の利用の多さと、注意力や、衝動的な反応を抑える能力の低さとの関連が報告されています。こうした関連は、若者だけでなく大人のデータでも見られました。[7]

ただし、「関連がある」と「動画が原因で能力が下がった」は違います。

動画の利用が影響した可能性だけでなく、もともと注意を保つのが苦手な人ほど利用しやすい可能性や、別の要因が両方に関わる可能性も考える必要があります。

この分析から「ショート動画を見ると脳が壊れる」とまでは言えません。一方で、昔も娯楽は批判されていたのだから、今も気にしなくてよい、と片付けるのも早そうです。

「昔にもいた」の答えは、一つではなかった

調べ始めたときは、昔にもドパガキのような人がいたのか、という疑問でした。

見えてきたのは、少なくとも二つの話です。

一つは、見たくない部分を飛ばしたり、次の内容へ移ったりする行動は、スマホ以前にもあったこと。

もう一つは、新しい娯楽への熱中を、大人や専門家が心配することも繰り返されてきたことです。

ただ、小説を何時間も読むことと、数秒で動画を切り替えることは同じではありません。それらを一括りにして「昔から全員ドパガキだった」と言うのも、少し違う気がします。

人の行動にも、それを取り巻く仕組みにも、続いている部分と変わった部分がある。

次にこの言葉を見かけたら、誰かを一言で分類する前に、何を楽しんでいて、何から離れにくくなっているのか。その中身の方が気になりそうです。

余禄――「楽しい」と「やめられない」の間

今回、言葉の由来以上に気になったのは、「楽しい」と「もっと欲しい」を分ける考え方でした。

もう十分見た気がするのに、指は次の動画へ動く。そんな場面を考えるときにも、一つの手がかりになりそうです。

僕が知りたくなったのは、自分がドパガキかどうかより、次の一本に何を期待しているのか、ということでした。

参考資料

[1] 鈴木朋子「『一瞬の退屈も我慢できない』SNS中毒“ドパガキ”ってなんだ? その心理と、日本以外の状況」ITmedia Mobile、2026年9月15日。記事
※言葉の意味・使用例の確認に使用。記事中の医学的説明を、そのまま本稿の根拠にはしていません。言葉の最初の使用者・初出投稿は本稿では特定していません。

[2] Berridge, K. C., & Robinson, T. E. (2016). “Liking, wanting, and the incentive-sensitization theory of addiction.” American Psychologist, 71(8), 670–679. 論文全文
※報酬の「liking」と「wanting」の区別について。ドパガキやショート動画を直接調べた研究ではありません。

[3] Sepstrup, P. (1986). The Electronic Dilemma of TV Advertising: Documentation, the Reactions of Business, Cultural Consequences and Consumer Implications. Working Paper No. 2, Aarhus School of Business Administration & Economics. ERIC収録資料・PDF
※テレビ視聴時のチャンネル切り替え、録画した広告の早送りなど。当時の研究報告であり、依存や脳機能を調べたものではありません。

[4] Orben, A. (2020). “The Sisyphean Cycle of Technology Panics.” Perspectives on Psychological Science, 15(5), 1143–1157. DOI: 10.1177/1745691620919372. ケンブリッジ大学リポジトリ
※小説・ラジオをめぐる歴史的な懸念は、この論文の紹介に基づきます。1941年のPreston論文等を直接検証したものではありません。

[5] 愛知学院大学図書館情報センター「『一億総白痴化』とは、いつ頃、誰が言った言葉か。」国立国会図書館・レファレンス協同データベース。回答と参考文献

[6] TikTok「TikTokが『おすすめ』に動画をレコメンドする仕組み」。公式解説
※サービス提供者による仕組みの説明。健康への影響を証明する資料ではありません。

[7] Nguyen, L., et al. (2025). “Feeds, feelings, and focus: A systematic review and meta-analysis examining the cognitive and mental health correlates of short-form video use.” Psychological Bulletin, 151(9), 1125–1146. DOI: 10.1037/bul0000498. PubMed・要旨
※本稿の研究規模・主要結果は要旨に基づきます。

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余禄log 管理人
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歴史、文化、生き物、科学、心理などジャンルは気分次第。
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