ダンゴムシは、左右交互に曲がるらしい。そもそも、なぜ?

ダンゴムシは、右に曲がると、次は左に曲がりやすいらしい。

「なぜ?」の前に、そもそもそんな歩き方をしていたことを知りませんでした。

丸くなる姿は知っている。でも、歩いているときに右と左のどちらを選ぶかまでは、気にしたことがありません。

あの小さな生き物は、さっき曲がった方向を覚えているのでしょうか。それとも、体が自然とそう動くのでしょうか。

まず、本当に交互に曲がるのか

今回調べたのは、オカダンゴムシの「交替性転向反応」という行動です。名前は難しいですが、意味は「前に曲がった方向と反対に曲がりやすい」ということ。[1]

例えば、通路で一度右へ曲がらせ、その先に左右を選べるT字路を用意する。すると、次は左を選ぶ傾向が見られます。

ただし、右、左、右、左と必ず繰り返す決まりではありません。何もない場所でも延々とジグザグに歩く、という意味でもありません。

ここで面白いのが、曲がり角どうしの距離です。

1956年の研究では、一度曲がったあと、次の分岐までの距離が長くなるほど、反対側を選ぶ傾向が弱まりました。[1]

さっきの曲がり方が、次の選択に影響している。でも、その影響はずっと続くわけではないようです。

「さっき右だった」と覚えている?

人間なら「さっき右に曲がったから、今度は左」と考えられます。ダンゴムシも同じなのかと思ったら、研究では脚の動きに注目した仮説があります。

曲がるとき、左右の脚は同じようには動きません。その動きの違いから生じる体の感覚が、次に曲がる方向へ影響する、という考えです。[2][3]

つまり、頭の中で「右」と言葉にして覚えていなくても、直前の動きが次の動きに影響する可能性があります。

ただ、これだけですべて説明できると決まったわけではありません。壁に沿って歩く性質や、神経系に備わる曲がり方のパターンも検討されています。[2]

「片側の脚が疲れたから、反対に曲がるだけ」と言い切るより、体の動きと周囲から受け取る情報がどう関わるのかを調べている、と捉えた方がよさそうです。

曲がり続けることで、遠くへ行ける

では、この歩き方にはどんな意味があるのでしょう。

例えば、直角に曲がる道で右、右、右、右と進むと、向きが一周します。同じ長さの道なら、元の場所へ戻ってしまいます。

一方、右と左を交互に選べば、ジグザグでも大まかには一方向へ進めます。障害物をよけながら、出発した場所から離れることにつながります。

2006年の研究では、自由に歩く場合より、逃避する状況の方が交互に曲がる行動が多く、歩く速度も速くなりました。研究者は、この行動が天敵から効率よく逃げることに役立つ可能性を示しています。[2]

もちろん、どんな地形でも最短で逃げられるわけではありません。それでも「同じ辺りをぐるぐるするのを避ける」と考えると、この小さな癖の意味が見えてきます。

しかも、途中で引き返すこともある

2016年の研究では、T字路を繰り返し歩くダンゴムシが、いったん曲がってから向きを変える行動も調べられました。

その方向転換は、同じ側への連続した曲がりを、結果として交互の曲がりへ変える場合が多かったと報告されています。[3]

見た目には「やっぱりこっちだった」と戻っているようにも思えます。ただ、本当に間違いに気づいたのか、人間のような記憶や意図があるのかまでは、この結果だけでは言えません。

最初は「左右交互に曲がるなんて知らなかった」という話でした。

調べてみると、そこには脚の動き、曲がった直後の影響、逃げるときの進み方が関わっていました。

次にダンゴムシを見かけたら、丸くなるところだけでなく、歩く先を少し追ってみたくなります。今、右へ曲がった。その次は、どちらへ行くのでしょう。

参考資料

  1. 渡辺宗孝・岩田清二(1956)「ダンゴムシにおける交替性転向反応」『動物心理学年報』6, 75–82。交替性と、曲がり角間の距離による変化を参照。
    https://doi.org/10.2502/janip1944.6.75
  2. 小野知洋・高木百合香(2006)「オカダンゴムシの交替性転向反応とその逃避行動としての意味」『日本応用動物昆虫学会誌』50(4), 325–330。脚の動きに関する仮説、壁沿いの歩行、逃避時の実験を参照。
    https://doi.org/10.1303/jjaez.2006.325
  3. Moriyama, T., Migita, M., & Mitsuishi, M.(2016)“Self-corrective behavior for turn alternation in pill bugs (Armadillidium vulgare).” Behavioural Processes, 122, 98–103。公開抄録・出版社の検索掲載抜粋を参照。本文全体は未確認。
    https://doi.org/10.1016/j.beproc.2015.11.016

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余禄log 管理人
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